2001.09の「ヤマザキ3行日記」

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#2001.09/29    狂牛病

 日本での狂牛病騒ぎが報道されている。
 私の友人O氏は、1980〜1996の間にイギリスに留学していて、献血もできないといっている。
 狂牛病とはなんぞやと思って調べてみると、お医者さんいわく、「牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy:BSE)」、つまり脳がスポンジ状になってしまうものであるらしい。人にかかる病として知られている「クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease:CJD)」とよく似た症状をもつものとのこと。
 細菌感染とは異なり、「プリオンとよばれる特殊な蛋白が病原体といわれています.プリオンは冷凍にも料理の熱にもびくともしない,たちの悪い病原体」(ただし、asahi.comの報道によれば、山内一也・東京大学名誉教授(ウイルス学)の話として、「プリオンは133度以上に加熱し、3気圧で20分以上、加圧処理すれば分解する」とのこと。「料理の熱」では分解しない。)で、これを体内に取り込むことで、長い潜伏期間を経て発症するようだ。
 詳しくは、リンクを張ったサイトに行って読んでもらうとして、対応は厳重にしてもらいたいものだが、しかし適切な対応をしているかぎり(それによって狂牛病の拡散がおさえられているかぎり)、罹患する率は、交通事故にあうこと以下であるようだ。この病気にかかる心配をするくらいなら、もっと別な病気にかかることを心配した方が実際的なようである。
 つまり、この病気は、病気そのものよりも、そのイメージに罹患することの威力の方が絶大なのである。
 東北では、これから芋煮会の季節である。狂牛病騒ぎだからといって牛肉なしの芋煮などせぬように。(ところで、芋煮には牛肉いれたかなぁ? 地方によって違うのであったか。)

#2001.09/26    近鉄優勝

 近鉄が3点差ビハインドの9回裏ノーアウト満塁で、今年阪神から移籍の北川が、代打逆転サヨナラ満塁ホームランで優勝を決めた。
 そのとき私は、同時多発テロのときと同じ中華料理屋で飯を食っていた。ちなみに、そうそう毎日その店で飯を食っているわけではないことは言っておかなければならない。
 そういえば、今日勝てば近鉄優勝だったなぁと思いつつ、食べながら見ていて、気づいたときにはすでに8回になっていた。オリックスがソロ・ホームランで点差は3点差に広がっているのを見つつ、これでもし2位のチームが負けたりして、負け試合なのに優勝が決まるなんてことになったら盛り下がるんだろうなぁなどと考えていた。そういう場合はどうやって欣ぶのだろうなどと思っていたくらいである。9回表が終った時点で、私はすっかり飯を食い終わっており、楊枝なぞつかって、もう帰ろうかとも思っていたが、もうちょっとだし見て帰ろうと思い直したら、あれよあれよという間に優勝である。
 ほんのちょっと前まで、誰もがもう今日は負けだと思っていたことだろう。数秒前まで勝つなどと思っていなかった。それが、いきなりの優勝である。突然ふって沸いたような出来事である点で、先頃の事件と似ていて変な一致ではある。


>モリオカ 私は、バッタを瓶詰めにしてつぶしたことはあるが、「蓑虫をひん剥いたり、それを木の枝に付けて糸を出させ、どこまでぶら下がれるか試してみたり、新たな蓑をつくらせたり」なぞしたことないぞ。

#2001.09/24    焚き火

 季節としてはまだはやいが、幼い頃、♪垣根の垣根の曲がりかど〜、焚き火だ焚き火だ落ち葉たき〜、などと歌ったもので、実際そういう場面もそこらでなかったわけではかたったが、ダイオキシンで騒がれて以来、焚き火など、そこらでするわけにもいかないんだろうなどと、つらつら思う。

 焚き火で思い出したが、小学生のころ、学校の塀のところにいっぱい笹が植えてあった。塀そのものは、コンクリでできていたのだが、その塀にそって植わっていたのである。
 ところが、あるとき(季節はいつだったのだろう、今頃か)、その笹に毛虫が大発生した。この大発生は、まさに大発生で、笹のそばにいくと、むしゃむしゃ毛虫が食している音が聞こえたものである。(思い出しても背筋が寒い)。
 私はソフトボール部員だったのだが、その一群の笹を、ソフトボール部の先生がすべて切り、部員が一カ所に集め、壮大な焚き火をした。ちょうど、レフトの守備位置くらいのところに集められて、よく燃えたように記憶する。
 ところで、そのことがなぜ私に忘れられない思い出になっているかというと、金輪際見たこともない毛虫の大発生であったことももちろんだが、その後の練習で、燃やしたあとの煤の残った地面に転び、真っ黒になってしまったからなのである。

#2001.09/20    傍観者からの発想

 米議会は「報復」路線を議決し、話は一方的に「軍事的な包囲網」をきずくための派兵という方向ですすんでいる。モリオカがいうように(「モリオカ日記」#2001/9/20)、日本においては「「自衛隊派遣」などを巡る内向きの議論に終始し」、「感謝してもらえなかった湾岸戦争協力の教訓」という文脈で、対米を中心とした国際関係における日本の自意識として論じられており、対内的には法律をめぐる議論に終始している。
 こういう方向でしか話ができないのは、日本政府がテロの「被害者」アメリカに対して「傍観者」(直接の当事者ではない立場)でいられない立場を強いられているからである。それが、おのずと軍事的な「後方支援」という形で、「加害者」――軍事力の発動となれば「被害者」は「敵」だけではなくなるのだから「加害者」となる――となるかどうかというところに議論がおちていく。
 もとより、事態に対して全く中立な第三者でありうるはずもないし、できるかぎり関わりをもたないでいようとする立場であるべきだという意味でいうのでもない。
 かといって、「被害者」米の側につくことで「報復」する「加害者」になるほかないということには、必ずしもならないはずではないのかという意味で、友人――仮に「イライラ棒」氏と呼ぶ――は「日本政府の対応についての私の考えは、「後方支援分の予算を難民救済に用いるべし」というものです」と言っていた。「イライラ棒」氏の意図は、テロ組織を平和戦略的に包囲し孤立に陥れるというものだ。

 (この意見に近いことを、宮○某の「アメリカ同時多発ゲリラ事件」の記事が書いている。しかし、アメリカが対策費としてあれこれ集めて準備しうる「10兆円を全部パレスチナ人に上げてパレスチナの復興につか」い、――パレスチナ人600万に「一人当たり160万円4人家族で600万円」くばれば、「元々物価激安の国ですから充分復興できる」と書いている――、「イスラエルとの地域紛争も一気に解決に向かわせ、エルサレムはパスポート無しで誰でも入れる特区とす」ればよいなどと、金で"すべてがすぐに"解決するかのような考えは短絡というべきだろう)。

 「イライラ棒」氏の意見にナルホドと思わされるのは、対米意識としてしか議論できない日本政府の問題点を突き、軍事的な参加のみが国際的自立でるあかのように議論されている虚をついている点である。日本の自意識という枠組みを越えたところで、自立した"傍で観みる者"の立場から、憂うるべき事態の問題点に単刀直入に言及している。
 軍事的に、力でねじ伏せようとする戦略が結局は事態をこじらせ、長期的に見た場合には効率の悪い戦略であるということは、国際的にはベトナム戦争・中東問題など、多くの事例が示してきたことではないかと思うと、なおさらである。

#2001.09/14    同時多発テロ

 連日報道が続いており、今も報道が続いている。アメリカで同時多発テロが発生した。ここも一種記録としての意味もあるからやはり記しておくことにする。
 9/11pm10:00前にニューヨーク世界貿易センタービルにハイジャックされた民間機が直撃炎上。pm10:00過ぎには、2機目が直撃。約2時間後に同ビル崩壊。
 アメリカ政府は、テロ組織に対する自由主義・民主主義=善としての徹底抗戦を宣言。相手は、仮にアラブ人であっても、敵は「テロリスト」であり、「テロリズム」であると強調。日本政府も同様の談話を発表している。

 11日の晩はといえば、10:20頃、私は自宅マンション下の中華料理屋で遅い飯を食っていた。テレビがついており、ニュースステーションをやっていた。映像が流れており、音はよく聞こえない。ビルが燃えている映像をみて、大火災かと思っていると、向かいの席にはおばちゃんたち6人ほどが座っていたのだが、なかの一人のおばちゃんが「ビルに飛行機が入ってるんだって、あははは」と言っている。続いて、飛行機のような影がビルにつっこんでいく映像が流れて、とりあえず、ただの火災ではないことが私にもわかった。
 阪神大震災のあった日は、風邪をひいて重い頭で朝テレビをつけたら、高速道路が倒壊して、街が炎上しているシーンがとびこんできたものだった。
 多くの人が、大震災のときに見たシーンを想起したことだろう。実際、そう語っているキャスターもいた。もちろん、天災と人災の差があるのだが、その差があいまいになってきている。それは、事をわけて言うならば、1つはメディアを通してのみ事を知るという事情、2つには事を引き起こした者が見えないこと、3つ目には被害者にとってふって沸いたように起こっていること。天災と人災の差は、2つ目の何者か人が引き起こしているか否かにある。核兵器による破局の可能性以降、こうした天/人の差が接近してきたといえるだろうか。この出来事が「犯罪」でも「事件」でもおさまりが悪く「戦争」と呼んでも適切な感じがしないのは、こうした事情がからんでいるだろう。

 私の友人は、今回のテロ事件とは別の問題として、最近の不況にからんで、今の企業競争が「勝利者のいない戦い、ルール無き戦い、単なる消耗」だと言っていたが、今度の出来事に対しても同じことが言い当たるのはどういうことだろうか。

 書いている最中に、佐野さんのエッセイがアップされたとのメールが届いた。「われわれは誰をどのように悼むのか。自爆テロの若者を悼むのか、アメリカ市民を悼むのか、アメリカの報復を全面支持するのか、空爆されるであろうアラブ世界の市民を悼むのか。」。
 ん〜、と思いながら読みつつ、端的にそんな自意識はありえないだろうと思う。それは、佐野さんも承知のうえのことだろう。
 そういう自意識は、善くも悪くも「傍観者」であるがゆえに強いられる。被害者への悼みがあって、しかしそれが変に=偏に高じることが「自爆テロの若者」への憎悪へ向かう短絡に帰結すれば、もはや「傍観者」ではなくなる。
 天災/人災の区別もさだかでなくなる出来事にあって、加害者/被害者といった区別が適当であるわけがなく、さしあたってわたしは「傍観者」の位置にあるには違いない。もちろん、「傍観者」もまた即「加害者」になりうるが、第三の位置であることからしか受け止めることができないし、すべきでもないだろう。

#2001.09/08    選択が強いられる日常

 気がついたら、もう9月も10日近くにならんとしている。
 夏がめちゃめちゃ暑い! と思っていたが、8月下旬にはすでに秋らしい風が吹き始めて、今年はどうも秋の気配がでるのがはやい。肌もなんだか、乾くようなのだ。

 来週には、ADSLに切り替える予定になっている。ISDNにしていた私は、ADSLが広がりはじめた当初はしばらくISDNのままでいこうと思っていた。だが、今や、値段までISDNより安くなってしまったので考え直した。
 参考までに、記すとおおよそ以下のようになる。
 (ただし、ADSLは電話局から半径2km以内でないと敷設できないという条件があったりする。)
 この数字は、今月現在の回線料金とISPの合計額のおおよその比較で、ISP(プロバイダ)は、ASAHIネットの場合。単位は円。細かい点での間違いがあるかもしれないので、あくまで参考までにおおよそを記すと以下の通り。

電話アナログ(プッシュ)基本料金2040/月ISDN基本料金2830/月
ADSL(e-access+asahi-net)2880/月FletsISDN+asahi-net3750/月
NTT回線料187/月  
5107/月6580/月

 もちろんこれ以外に工事費・設備費がかかるが、はじめて導入する場合には、ISDNもADSLもほとんど同じくらいかかる。月額で約1473円の違いだから、年額で17676円違う。それを考えると、私のように切り替えて初期の設備投資をしても1年数ヶ月で元をとれる。あるいは、スピードが、おおよそ20倍の速さになるのだから、それを考えても損ではないだろう。
 コンピュータ機器関連の大手メーカが大規模なリストラをしている一方で、コンピュータの値段もかなり価格が割れていて、ばらつきもひどい。何を比較するかによるけれども、同じようなものでも、かなりちがっている。いわゆる郊外などにある電気屋さんで売っているパソコンは、型が古い上に値段も高かったりする。そういうところで、初めて買うという風情の中年夫婦などが店員の話を聞いているところを見ると、その値段だったらもっと良いのが買えるのにと思ったりする。
 こんなに値段に格差があったり、商品の質と値段が錯綜していることに出会った記憶がない。
 商品が細分化され、組み合わせによって質も値段もかわってくることが、かなり広い範囲で日常的に起こっている。電話料金もそうだ。この記事を書くために電話の基本料金を調べようと思ったら、何々サービスが山のようにあって、シンプルな電話だけの基本料金の情報などが、逆になかなかみつからない。マイラインがどうのと制度が変わったりして、「基本」的なレベルで、いちいち選ばなければならなくなっている。
 つまりは、きわめて複雑性が増大している。こんなことは、たとえば、保険などにもいえるだろう。
 自分にとってもっともふさわしい商品で日常生活のライフ・プランをたてること自体に、あまりこだわらずとも知識と思考を費やさねばならない仕組みになってきていることは確実だろう。
 こうした局面で起こっているのは、あらゆる場面で、「選択の幅が増えた」というよりも、「選択を強いられる」ようになっているということだ。成熟した近代社会とはかようなものかと日々これ感じる今日この頃である。

YAMAZAKI Yoshimitsu
E-mail:yymzk@fo.freeserve.ne.jp